第4章 四夜目.恋のかけら
—12小節目—
背中押す手が温かかったから
話があるんだ。
そう告げただけだというのに、環は叱られた仔犬ような顔をした。おそらく、これから説教でもされると思ったのだろう。
開口一番。ベットに腰掛けた環は、王様プリンの人形を抱き締めて言う。
「話って、えりりんのことだろ」
「え?」
「だって、そーちゃんがその顔してる時は、いっつもそうだから」
「その顔って?」
「眉毛の間に、ぐーってシワ出来てる。あんた、自覚ないのかよ」
これには、苦笑するしかなかった。中指で眉間を押して皺を伸ばした後に、再度環に向かい合う。
「環くんの言う通り、中崎さんのことだよ」
「あのさ…さきに言っていい?」
「いいよ」
「俺、多分そーちゃんに何言われても、えりりんのこと好きなのはやめらんないと思う」
ぬいぐるみを抱く腕にきゅっと力を入れて、申し訳なさそうに環はごめんと続けた。
「あ、でもだからって、そーちゃんのことを…ないがしろ?にしてるわけじゃねえから。俺がそーちゃんのこと、どうでもいいって思ってるって、思って欲しくないってか…
あーー…ごめん。俺、ワガママ言ってるよな」
「ううん。そんなことない。僕は君の気持ち、分かってるつもりだよ」
だから、こんな優しい君だからこそ、心の底から応援したいと思うんだ。
壮五は環の隣に座って、そう告げた。