第4章 四夜目.恋のかけら
「環くんは、中崎さん本人にその気持ちを伝えたことはないんだよね?」
「うん。ほんとはめっっちゃ言いたいけど、言ったらえりりん困るかなって…」
「驚いたな…!環くんが、そこに気付けるなんて」
「なあ。あんたの話って俺に喧嘩売ること?」
違う違う!言いながら、壮五は首を左右にぶんぶんと振る。その勢いは、環の髪を揺らすほどの風が起こるくらい強かった。
「なんだよ。じゃあ、そーちゃんの話ってなに」
「何も言わないで、僕の提案を受け入れて欲しい」
「相変わらず前置き長ぇんだって」
「ねぇ、環くん。僕のこと、信じられる?」
「当たり前じゃん」
即座に返された言葉に、壮五は思わず瞳が潤みそうになる。しかし、今は嬉し泣きなどしている場合ではない。
「君は早い内に、エリさんに告白すべきだと思う」
「え!?まじで?言っていいの?」
「はは。言いたくて言いたくて仕方がないって感じだね」
「当たり前じゃんか!」
二度目の “当たり前” に、壮五はついに声を出して笑ってしまう。
「本当に、よっぽど好きなんだね。やっぱり中崎さんの作った壁を壊せるのは君だけだと思う」
「え?壁?えりりんって、自分で家造ったん?」
「いや、そういう意味の壁じゃなくて…」
「てか、俺えりりんの家知らねえから、そもそも壊すとか無理だけどな」
「知ってたら壊すの!?」
「まさか。そーちゃんじゃあるまいし」
「僕だってそんなことしないよ!」
二人でひとしきり笑った後、壮五は環の背中にそっと手の平を置いた。
「ん??なにそれ」
「気合いの注入。どうか、君の告白が上手くいきますようにって」
「……ふーん」
しばらくされるがままになっていた環だったが、やがてぽつりぽつりと落とすように言う。
「あのさ…。俺、そーちゃんのこともだけど、IDOLiSH7も大事だよ。だから、そういう大事なもん壊れないように、なんか色々気を付けるから。でも俺は馬鹿だから、何をどう気を付ければいいのかよく分かんなくて…」
「大丈夫だよ。そういうことが大切だって、分かってくれてるだけで十分だから。これから一緒に、考えていこうね」
そう告げると、環はほっとしたように飛び切りの笑顔を浮かべた。