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十六夜の月【アイナナ短編集】

第4章 四夜目.恋のかけら




『私と環くんの仲が良いってどこかから聞き付けたんでしょうね。ある事ない事、まるで誘導尋問のように言わせようと必死でしたよ。だから私、言ってやったんです』

「何と、仰ったんですか?」

『二度と来るな。このゴキブリ野郎って』

「さっきは言葉を濁していたのに本人にははっきり言ったんですね!」


壮五は、環が選んだ人を信じきれなかった自分を恥じた。しかし、まだ全ての疑念が晴れたわけではない。


「中崎さん。もうひとつ、お伺いしてもいいでしょうか」

『逢坂さんの誤解を解く為なら』


エリはひとつ大きく頷いた。壮五も、しっかりと頷き返す。


「環くんのことをどう思っているのかと僕が先ほど尋ねたとき、答えを返してくださらなかったのは何故ですか。
どうして、あんな顔をしたんですか?」

『……私は、どんな顔をしていましたか』

「まるで、申し訳ないと謝っているような表情でした」


そう。その顔を見て、壮五はエリが黒だと判断したのだ。


『ごめんなさい。どう答えれば分からなくて』


では、どのような答えを壮五は望んでいたのだろう。


「環くんのこと、嫌いですか?彼の気持ちは、あなたにとって迷惑でしかないですか」

『そ、そんなことない!』

「じゃあ…異性として、好きですか?」

『〜〜っ、!!』


望んでいる答えなど決まっている。

エリと環が想い合っていれば良いのにと、ずっとそう願ってきたのだから。

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