第4章 四夜目.恋のかけら
「証言者は文秋にとって都合の良い言葉を並び立てる。そうすれば取材料として莫大な金銭を受け取れるらしい。たとえその証言が、嘘偽りだったとしてもね」
「なるほど。証言者は記者とグル、というわけですか」
「そう。記者は常に血眼で、有益な情報を売ってくれる証言者を探してる」
そこまで言うと、百は懐から写真を数枚取り出した。それらには全て、中年男性の顔が写っている。
「多分全員じゃないけど、この人達全部記者だから。あ、これモモちゃん調べね」
「拝借します」
それらを撮影することの許可を貰い、壮五は一枚ずつ携帯に収めていく。その最中、百はさらに念を押した。
「IDOLiSH7は純粋な子が多いから。変なのに引っかからないように気を付けてあげて。お願いね!」
「気を付けておきます。情報を教えていただいて、どうもありがとうございました。百さん」
丁寧に頭を下げると、百は歯を見せ笑った。そして壮五から例の写真を全て受け取ると、別れの言葉を口にした。
だんだん小さくなる百の背中を見送っていたのだが、彼はくるりとこちらを振り向いた。
「あ、そうだ!ユキがね、近いうちに王様プリン持って環に謝りに行くって言ってた!その時は、愛しのダーリンのことヨロシクねん!」
壮五に向かって、ブンブンと大きく振られる手。ついつい彼につられるように笑顔になって、遠慮がちに手を振り返した。
楽屋へと向かいながら、壮五はさきほど見たばかりの写真の男達を思い浮かべていた。なるべく早く、メンバーと情報を共有した方が良いだろう。
「……あ…!」
壮五は、思わず声を漏らしてしまった。理由は、覚えたばかりの男の顔が前に現れたから。しかも、その記者と一緒にいたのは…
中崎 エリ。環がえりりんと呼んで慕う女性だったのである。