• テキストサイズ

十六夜の月【アイナナ短編集】

第3章 三夜目.トライアングラー




—11小節目—
SECRET NIGHT


部屋へと入って扉を施錠するなり、三月に壁際へと追いやられる。背中がとんと壁に当たるのとほぼ同時に、やや強い力で彼の唇が合わさった。


『っ、ん…、ぅ』

「は…、」


二人が交際をスタートさせて数ヶ月が経つが、三月は一度もエリの肌に触れたことはなかった。いわゆる、キス止まりという奴だ。それに、このような激しい口付けはまだ数えるほどしかしていない。エリの頭は、くらくらと揺れ始めていた。


「わるい…。がっついちまった。エリが、あんなこと言うからだからな。オレ、嬉しくてつい…」

『あのまま、好きにしてくれて良かったのに…』

「おまっ、意味分かって言ってるんだよな!?」

『ふふ、だって今日は三月の誕生日だもん』


エリがリンゴを頬張ったような赤い顔で笑うと、三月は頭を抱えた。もしかすると、幸せがキャパオーバーして爆発してしまいそうだったのかもしれない。


「んなこと言われたら、本当にもう止まってやれないからな」

『うん。いいの』

「…出来るだけ優しくしてやりてえの。とりあえず、シャワーとか浴びるか?その間に、ちょっとこの頭冷やしとく」


野生を見せても良いのか迷っている羊のようだと、エリは今の彼を見て思った。

/ 249ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp