第3章 三夜目.トライアングラー
—11小節目—
SECRET NIGHT
部屋へと入って扉を施錠するなり、三月に壁際へと追いやられる。背中がとんと壁に当たるのとほぼ同時に、やや強い力で彼の唇が合わさった。
『っ、ん…、ぅ』
「は…、」
二人が交際をスタートさせて数ヶ月が経つが、三月は一度もエリの肌に触れたことはなかった。いわゆる、キス止まりという奴だ。それに、このような激しい口付けはまだ数えるほどしかしていない。エリの頭は、くらくらと揺れ始めていた。
「わるい…。がっついちまった。エリが、あんなこと言うからだからな。オレ、嬉しくてつい…」
『あのまま、好きにしてくれて良かったのに…』
「おまっ、意味分かって言ってるんだよな!?」
『ふふ、だって今日は三月の誕生日だもん』
エリがリンゴを頬張ったような赤い顔で笑うと、三月は頭を抱えた。もしかすると、幸せがキャパオーバーして爆発してしまいそうだったのかもしれない。
「んなこと言われたら、本当にもう止まってやれないからな」
『うん。いいの』
「…出来るだけ優しくしてやりてえの。とりあえず、シャワーとか浴びるか?その間に、ちょっとこの頭冷やしとく」
野生を見せても良いのか迷っている羊のようだと、エリは今の彼を見て思った。