第3章 三夜目.トライアングラー
—10小節目—
プレゼントは私
『だから、私と三月が恋に落ちた日は全く同じだったってわけ』
「か、買い占めて良かったあ!」
とある有名ホテルの最上階。最高の料理に舌鼓を打ちながら、エリは自分が恋した日の話を語って聞かせた。
実はこの日、三月の誕生日である。最愛の人の大切な日を祝う為、この店の予約はエリが取り、デートプランも彼女が練ったのだった。
気になっていた映画を観て、欲しい物もないのにショッピングモールを練り歩いた。二人でいれば、それだけで楽しくて幸せなのだと実感する一日となった。
そんな一日を締めくくる予定こそが、この場所でのディナーというわけである。
『フォアグラって初めて食べた!美味しいんだねぇ』
「美味いよな。そんなにしょっちゅう食えるモンじゃないし!」
『うーん。なんとかして、身近なものに出来ないかな。本物じゃなくても、他の材料で似た物を作ってさ!おにぎりの中に入れるの!そしたら、気軽に食べられると思わない?』
「フォアグラを、他の食材で作る…って、エリが?」
『もちろん!』
「う、うーーん…
フォアグラは、たまに食うからこそ特別感があって美味く感じる…とか、あると思わないか?」
『あー、なるほど。たしかに、それも一理あるかもしれない』
三月は、フォアグラもどき爆誕の阻止に成功したのであった。