第3章 三夜目.トライアングラー
額同士がくっつきそうな距離で三月と楽は睨み合い、バチバチと火花を散らす。しばらく時間が経ったが、二人の剣幕は凄みを増すばかり。いよいよエリが仲裁に入ろうとした、その時だ。ついに痺れを切らした “彼” が、店に乱入してしまう。
「あーもー時間かかりすぎだから!みっきー!えりりんに告白出来た!?」
環の視界に映ったのは、この場にいるはずのない楽の姿。そして、驚きのあまり零れ落ちそうなほど大きな目をしたエリ。それから…
顔を真っ赤にして、小刻みに震える三月である。環はそんな彼を見て、まるで沸騰したヤカンみたいで、耳から蒸気が出るのでは?とか思った。
「あーー…。
間違ったことを、間違ったタイミングで言っちまった、んだよな?俺、分かるよ。だって、空気読める男だから!」
『自分の非を認めた直後に、何故か威張ってる!す、すごい子だ…!』
「って、うわ!おにぎり屋にも、がっくんのそっくりさんがいんじゃん!蕎麦屋さん初めて見たときもびっくりしたけど、こっちも似てんなぁ…クリソツ」
「ごめん。環、本当にごめんな。ごめんだけど、ちょっと黙っててもらっていい?」
徐々に普段の顔色を取り戻していた三月が、涙目で環の肩に手を置いた。