第3章 三夜目.トライアングラー
「ありがとうな、環。めちゃくちゃ勇気付けてもらったよ」
「へへ。なら、いつ告白する?明日?」
「ええ!?急展開過ぎるだろ!」
「なんで?だって、ずっとえりりんのこと好きだったじゃん。早く言わないと、もしがっくんとえりりんが結婚とかしちまったらマズくね?」
「いやー。改めて、環のその真っ直ぐな考え方って凄いって思うわ。尊敬に値するよ」
環はまた自信いっぱいに微笑むと、腰に手を当て胸を張り三月に告げる。
「明日、俺もおにぎり屋に付いてってやんよ!」
「え」
「大丈夫!外から応援するだけにすっから!俺、空気読めるから!」
「ほ、ほんとか…?っつーか!告白はするかどうかまだ分からないからな!?そういうのには何かこう、流れとかがあるから!」
「??うす」
本当に環は分かってくれているのだろうか。三月は一抹の不安を感じざるを得なかった。
しかし告白するかどうかは置いておいても、三月の気持ちは確実に上向いた。今すぐにでもエリの顔が見たいと、一刻も早くエリの声が聞きたいと思えたのだから。
楽と彼女の関係は確かに頭を悩ませるが、それでも今この胸に咲いた花をこのまま枯らせてしまうのは嫌だと、そう思ったのだ。
「それ、いらねーなら俺が食っていい?」
環の声で、我に返る。彼が指差していたのは、テーブルの上に放置したままになっていた一杯の蕎麦。
「駄目」
三月は水滴がついたラップを取り去ると、勢いよく麺を啜った。麺は汁を吸ってすっかり伸びてしまっていたが、その蕎麦は優しい味がしてとても美味しかった。
「…なあ、いっこだけ訊いていい?」
「うん?」
「なんで蕎麦屋さんが、がっくんの話してたんだろ。あの二人、知り合いってこと?」
「………」