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十六夜の月【アイナナ短編集】

第3章 三夜目.トライアングラー




「みっきー、がっくんに負けてると思ってる?」

「そりゃ…まあ」

「たとえば?どんなとこ?」


いつの間にか環のペースに引き込まれている三月は、うーんと首を捻った。


「歌とかオレより上手いし?」

「みっきーだって上手い」

「ダンスとかプロ並みだし」

「みっきーだってプロじゃん」

「背も、オレより全然高いだろ」

「背が高い方が偉いのかよ」

「絶対に八乙女の方がイケメンだしさ…」

「そう?みっきーは、がっくんみたいに吊り上がった目がいいってこと?」


じゃあ俺が、みっきーの目のここセロテープで貼ってやんよ!と、環は三月の両目尻を斜め上へと引っ張り上げた。
目の横を引っ張られ急激に視界が狭くなった三月は、込み上げてくる笑いに耐えられなかった。


「あはは!やめろって環!もう分かったよ!」

「はは。俺、そうやって笑ったみっきーの顔、めっちゃ好き」

「そっか…。ありがとうな」

「他には、みっきーが作ってくれる料理は全部好き。あとは、俺がトークで何喋っていいか分かんなくて黙っちゃったとき、代わりに面白いこと言ってくれるとこも好きだし。疲れてんのに、皆んなの世話焼いてくれるとこも優しくて好き」


環は折った指を見ながら、好きを重ねていく。好きが重なる度、三月の目頭はどんどん熱くなっていった。


「がっくんのことも、カッコイイと思うし好きだけどさ。俺は、みっきーだって同じぐらいカッコイイと思ってっし、もっと好きだから」

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