第3章 三夜目.トライアングラー
「みっきー、がっくんに負けてると思ってる?」
「そりゃ…まあ」
「たとえば?どんなとこ?」
いつの間にか環のペースに引き込まれている三月は、うーんと首を捻った。
「歌とかオレより上手いし?」
「みっきーだって上手い」
「ダンスとかプロ並みだし」
「みっきーだってプロじゃん」
「背も、オレより全然高いだろ」
「背が高い方が偉いのかよ」
「絶対に八乙女の方がイケメンだしさ…」
「そう?みっきーは、がっくんみたいに吊り上がった目がいいってこと?」
じゃあ俺が、みっきーの目のここセロテープで貼ってやんよ!と、環は三月の両目尻を斜め上へと引っ張り上げた。
目の横を引っ張られ急激に視界が狭くなった三月は、込み上げてくる笑いに耐えられなかった。
「あはは!やめろって環!もう分かったよ!」
「はは。俺、そうやって笑ったみっきーの顔、めっちゃ好き」
「そっか…。ありがとうな」
「他には、みっきーが作ってくれる料理は全部好き。あとは、俺がトークで何喋っていいか分かんなくて黙っちゃったとき、代わりに面白いこと言ってくれるとこも好きだし。疲れてんのに、皆んなの世話焼いてくれるとこも優しくて好き」
環は折った指を見ながら、好きを重ねていく。好きが重なる度、三月の目頭はどんどん熱くなっていった。
「がっくんのことも、カッコイイと思うし好きだけどさ。俺は、みっきーだって同じぐらいカッコイイと思ってっし、もっと好きだから」