第2章 往昔
「腕、細いね。ちゃんと食べてる?」
『食べてる、けど……』
「朝と夜はたまに残すくらいだよね。力入れたら本当に折れそうだ」
食べてる、って言ったけど、学校の給食はあまり食べていない。
本当の事を言う必要ないと思ったから嘘をついた。
『その、腕…痛い……』
離して欲しくて、「痛い」と言った。
掴まれている手で握っていたシャーペンが落ちた。
すると、パッと掴んでいた手を離してくれた。
直ぐに私は落ちたシャーペンをしゃがんで拾う。
何故かお父さんもしゃがむ。
その時、お父さんは私の髪に触れた。
「ちゃんの髪ってすごく綺麗だよね」
そういうお父さんの事を私はじっと睨んだ。
『(気持ち悪い……)』
何もかもが気持ち悪く感じた。
「かわいい」
『(かわいいって何が…?)』
また気持ち悪い、って思った瞬間に唇同士が触れた。
理解するのに時間がかかって、お父さんの事を押し退ける事が出来なかった。
それからは、後頭部をおさえられてどうしようも出来なくなった。
舌を絡められて逃げられない。
気持ち悪くて、鳥肌が立つ。