第2章 往昔
きいちゃんにご飯をあげ終わって、私は鞄から教科書、筆箱とノートを出した。
自分の部屋で勉強をしようと思ったけど、寒いからリビングでする。
教科書の問題を解いていると、お父さんの視線に気づいた。
『な、に……?』
何だろう、と思って声を掛けた。自分の声が想像以上に震えていた。
「偉いね。帰ってきてすぐ勉強するの」
『…そろそろテストだから』
「私立入試もくるよね。私立は、暁月(あかつき)高校を受けるんだっけ」
『…うん』
「公立も受けるのかい?」
うん、とだけ言って会話を終わらせた。
勉強に集中できないし、お父さんと話したくない。
「勉強教えようか?」
その言葉に息を飲んだ。
嫌だ。私は率直にそう思った。
昨日の夜みたいなると思ったから。
酔ってないだろうけど、そうなるかもと想像してしまう。
『いや、大丈夫、です……』
パタンと教科書とノートを閉じた。
閉じた教科書とノートを持って、手にはシャーペンを握ったまま立ち上がった。
寒いけど、自分の部屋で勉強しよう。
私は逃げるように、部屋に向かおうとする。
けど、お父さんの手によって行くことを遮られた。
掴まれている手首が痛い。