第2章 往昔
「はいないの?好きな人とか気になる人」
香子ちゃんたちの姿が見えなくなった時に聞いてきた。
『えっ?私はいないかな……』
「そっかあ…、私も彼氏欲しいなあ。好きな人とのキスって憧れる」
そう花灯ちゃんが言った。
私はさっきの話で香子ちゃんと花灯ちゃんの2人に気づかれないように反応していた。
私も最悪な形でキスをした。
でも、あれはノーカン。ノーカウントにしたい。
だけど紛れもない事実。認めるしかない。
『はあ……』
「どうしたの?ため息なんかついて」
誰にも言えない。あんなこと。
ずっと心の奥で秘めとかないと。
とぼとぼと歩いていると花灯ちゃんが話した。
「香子、休み時間も受験勉強してるよね」
『…そうだね』
私も受験勉強をしているけど、香子ちゃんと勉強量が全然違う。
「やっぱ、香子は一中(いっちゅう)に行くのかな」
花灯ちゃんが言った【一中】は第一中央って言う普通高校。そこは、偏差値高くて結構有名。
「もそこ受けるんだっけ?」
『ううん、積善高校にした。花灯ちゃんは?』
最初は第一中央に志望していたけどギリギリだから、他の高校にした。
「私は女子高。親が行けってうるさくて。お金がないからね。……それに、そこしか受からないだろうし」
花灯ちゃんは母子家庭で、色々悩んでいるらしい。
「一緒の高校が良かったね」
悲しい声で彼女は言った。私は震えた声でうん、と答えた。
中学で初めて声をかけてくれたのが花灯ちゃん。クラスも3年間一緒で、仲良くしてくれた彼女と高校が離れるのはすごく寂しい。
「じゃ、ばいばい。気をつけてね!」
分かれ道で花灯ちゃんが言った。
『うん、ばいばい』
そう言って花灯ちゃんと私は別れた。