第1章 小さな店
エルヴィンと飲む店はいつも同じ。
好きな酒があるとかそういうんじゃねぇが、落ち着く。
「最近は私の誘いを断るけど、彼女でもできたのか?」
「ハンジにも聞かれたが、そんなんじゃねぇ」
「はは、そうか」
エルヴィンは少しつまらなさそうな顔をしてちびちびと酒を煽る。
「お前はどうなんだ?」
「私か?そうだなぁ…」
エルヴィンは俺の後ろを指さして言った。
「あの子がいいと思う」
「……正気か?」
「相変わらず失礼な奴だな君は」
こいつの指す方向にはお世辞にも細いとは言えない体型の店員。
まぁ、顔は中の中…普通ってとこだ。
そこで、ある人が目に入った。
長い金髪を降ろし、店とは違い少し華やかな格好をした人物。
相手も気付いたようで口パクで
リ ヴァ イ さ ん
と言って手をヒラヒラと振ってきた。
それに対し左手を少し上げると微笑んで前に座る女と談笑を始めた。
「なるほどな」
「なんだ」
楽しそうにニヤついているエルヴィン。
「あの子が好きなんじゃないか?」
「ッゴホ…!てめぇ…!」
ストレート過ぎる言葉に、思わずむせた。
「その様子じゃ図星のようだが?」
「黙れ…そん……」
そんなんじゃない。
いつまで自分に嘘をつくつもりだ。
プレゼントまで用意して
好きじゃない
とは大きな矛盾が生じていることくらいわかってる。
「私は応援するよ」
「反対される理由は無い」
「それもそうだな」