第10章 裁判と約束
禰豆子を浮かび上がらせたのは実弥だった。
着物の襟元を掴まれプラプラと空中で揺れるさまは、仔猫を彷彿させる……物凄く威嚇している仔猫だが。
「実弥さん、どうかあまり乱暴には……」
「あ"ぁ"?これくらいでどうにかなるもんじゃねぇだろ、鬼なんだからよォ!」
そう言ってポイっと禰豆子を木箱の中へ放り込み、乱暴に蓋を閉めて更紗に手渡す。
「お館様を待たせんな。行くぞ」
実弥は木箱に向かって舌打ちをすると、庭へと歩を進めた。
そんな様子を戸惑いながら見つめていたが、杏寿郎がそっと背中へ手を当てて庭へと促してくれた。
「不死川の言う通り、お館様をお待たせしてはいけない。その子を溝口少年に預けたらすぐに怪我を治癒して、元の場所に戻るぞ」
「はい!ありがとうございます」
これからすべきことを全て指示してくれた杏寿郎に感謝し、更紗は促されるまま実弥の後を追って庭へと移動する……
(杏寿郎君の中では溝口で定着してるようですが……訂正して差し上げた方がよろしいのでしょうか?)
小さな疑問を頭で浮かべながら。