第10章 裁判と約束
未だに呼吸は荒いが先程よりもだいぶと落ち着きを取り戻しつつあり、唾液の量も減っている。
「人はみんな家族だ。守るべき存在だ……」
まるで暗示のように諭すように、炭治郎は押さえ付けられたままゆっくりと言い聞かせる。
すると禰豆子の体から完全に力が抜け、パッチリとした愛らしい瞳からポロポロと大粒の涙を流し、再び更紗へと両手を伸ばしゆっくり近づいて行く。
それを見た実弥が抜刀しようと柄を握ったところを、杏寿郎が手で制した。
「おい!殺されんぞ!」
「よく見てみろ、あれは違う…… 更紗に甘えに行ってるのではないか?」
そう言われ実弥は柄から手を離すこともせず、更紗の方へ視線を向けた。
「なんだァ?あれは」
この場にいる全員の目に映ったもの、それは子供のように泣きじゃくりながら更紗にしがみつく禰豆子の姿だった。
更紗も突然の事で驚き目をパチクリと瞬いていたが、しがみつき子供のように泣く年下の少女を放置出来ず、そっと禰豆子の背に腕を回し包み込むように抱きしめてやった。
「ふむ……母親か姉とでも思っているのかもしれんな!不死川、俺は様子を見てやることに決めたぞ!」