第10章 裁判と約束
「私は構わないよ。だが更紗をそばで導いてくれている杏寿郎や実弥の意見を優先したい」
お館様はまず更紗の師範である杏寿郎へ視線を向け、答えを促した。
「俺は君の止血を優先させたいのだがな」
杏寿郎は小さく独りごちて更紗の罪悪感を刺激しながらお館様へ向き直る。
「俺や不死川の立ち会いのもと……という条件付きであれば。有事の際は抜刀をお許し願いたい」
杏寿郎の返答に頷くと次は実弥へ視線が動く。
「証明出来るのならば問題ございません。ですが、そいつに僅かにでも害をなそうものならば即座に頸を斬ります」
2人の当たり前ながらも物騒な意見に更紗は身震いするが、お館様はそうはならないと確信しているのか穏やかな表情で頷いて了承した。
「本来は違う要件で更紗を呼んでいたのに悪い事をしてしまったね。では杏寿郎、実弥と一緒に禰豆子を連れてこの部屋に入っておいで」
更紗は頷くと禰豆子の入っている木箱を抱え上げて立ち上がる。
「木箱は俺が持つ」
そう言って差し出してくれた杏寿郎の手を更紗は首を左右に振って木箱をギュッと強く抱き抱えた。
「ありがとうございます。しかしながら私が言い出した事ですので、この子は私にお任せ下さい」