第10章 裁判と約束
(これ以上、禰豆子さんを刺激しないで!このままじゃ沢山の命が……)
そんな更紗の願いは届くはずもなく、実弥は追い打ちをかけるかのように自らの腕に日輪刀をあてがった。
それを目にした瞬間、更紗は必死にその腕にしがみつき日輪刀から腕を離させる。
「おい、何してんだァ?鬼を庇うなら」
「違います!実弥さんが血を流す必要はないのです!鬼の醜さを証明するのであれば、私を使ってください!実弥さんほどではないですが、私も稀血をもつ人間です……既に血も流れておりますので、私にその大役を担わせてください!」
実弥の怒気は驚きへと変化して、視線が更紗の腕に注がれる。
そしてもう1人、杏寿郎が立ち上がり歩み寄って来て更紗の前に跪き腕を掴んで上に上げさせた。
「なぜ君は自分の怪我に対してそんなにも無関心なのだ。そんな大役、任せられる訳がないだろう。下手をすれば襲われるのだぞ?何を考えているんだ……全く」
そうは言いつつ、更紗の頑固さを知っている杏寿郎は既に諦めているように見える。
更紗からすればもう今すぐにでも大役を任せてもらいたい気分である。
自分の血に反応している禰豆子が強力な稀血をもつ実弥の血の匂いを嗅いでしまったらと思うと恐怖しか沸いてこない。