第10章 裁判と約束
木箱には実弥に開けられた穴があり、血を流し続ける更紗がすぐそばに佇んでいる。
しかも更紗の血は鬼が好む稀血だ。
(このままだと禰豆子さんが血に当てられてしまう!でも今更離れたとしても……)
更紗は自分の足元を見て愕然とする。
大量ではないものの腕から流れ出た血が庭に敷かれた石の隙間を伝って木箱の近くへと流れて行っている。
(私のせいでこの子が殺されたら……3人の人の命も全てなくなってしまう!)
もう更紗に周りの声は入ってこない。
どうにか切り抜けなければと視線を彷徨わせてもそんな事は何の解決にも繋がらない。
「お館様!証明しますよ、俺が!鬼というモノの醜さを!」
今の状況を更に悪化させるであろう言葉だからか、やけにその実弥の言葉が更紗の鼓膜を強く刺激した。
実弥は振り向き、更紗には目もくれず木箱に向かって日輪刀を勢いよく何度も突き刺す。
それを止めようとした炭治郎は小芭内によって押さえつけられ、息をすることすらままならない状態だ。
普段ならば2人のそんな行動を止めに入っていたかもしれない。
だが今はもうそれどころではない。