第9章 風柱と那田蜘蛛山
途中から合流した鎹鴉に導かれ、更紗が襲われた場所を通り過ぎた。
そこは柱2人の指示で隠達が懸命に後処理を施してくれたのだろう、全てが綺麗に片付けられていた。
あのままでは稀血の匂いに釣られて新たな鬼が現れる危険もあるが、何より更紗の血が鬼に渡った際にどのような影響を及ぼすか知れない事が痕跡を消した1番の理由なはずだ。
そうして2人に合流するとそこには柱の1人である義勇も合流しており、そして更に3人の拘束された男達がうつ伏せの状態で横たわっていた。
その背中は忘れもしない、更紗を切り付けた者達の背中だった。
一気に頭に血液がのぼり我を忘れそうになるも、柱として個人的感情だけで動く訳にはいかないと言い聞かせ、仲間達だけを視界に映す。
「この者たちは……君達が捕らえてくれたのか?」
「そうだ。一旦あの場を離れたと見せかけて、戻ってくるか確認してたら……こいつら派手に戻ってきやがった。で、お前に見せたいものがある」
天元は視線を実弥へと移す。
どうやら見せたいものと言うのは実弥が所持していたようで、手に握られた小さな瓶を杏寿郎の前に差し出した。
「どうやら、これが目的だったみてぇだなァ」