第24章 凄惨と合流
僅かな時間の祈りを終えた2人は再び先へと進み出し、階段を探しては上るを繰り返して数分の時間が経過した頃、今までの振動とは全く違う種類の振動に襲われた。
下から上へ突き上げるような振動で、まるで大地震に見舞われたのではと勘違いしそうなものだった。
「愈史郎殿が押し勝ったか!階段を上り切るぞ」
つまるところ、これから地上へこの本拠地ごと押し出されるのだろう。
階段では上手く体幹を保てないが故の杏寿郎の判断に違いないが……すぐに上り切れる距離ではない。
しかし泣き言を考えている時間的余裕もないので自分の速くない足を恨みながら更紗は足を踏み出すも、その足が地を蹴ることはなく急に浮遊感に包まれた。
「わわっ!杏寿郎君?!」
「すまない!この方が速い!」
言わずもがな更紗は杏寿郎の肩に担がれ、返事を返す前に一気に階段を上りきることとなった。
そうして上り切ったところで床へ降ろされたかと思うと、まるで更紗の体を庇うように上から杏寿郎が覆い被さる。
「これじゃあ杏寿郎君が!」
「大丈夫だ!今は身を守ることだけ考えろ!」
耳元で聞こえた杏寿郎の言葉はいつもより早口で、今の状況が切迫していると嫌でも理解出来る。
地上へ出して貰えたとて無事でいられるのか……と不安に苛まれている間にも浮遊感に襲われたり体に重さを感じたり……上下左右どちらを向いているか判断出来なくなっていった。