第24章 凄惨と合流
「動けないだけで生きてる人がいるかもしれません!私は傷を癒す力があります!救える人がいるなら」
「更紗」
名前を呼ばれたと認識した時には、全身が温かなもので包まれていた。
杏寿郎が抱き寄せてくれているのだと理解した途端、我慢していた涙がポロポロと頬に零れていく。
「あれほどにまで手酷く傷を負わされて生きていられる人間はいないんだ。救える力があるからこそ辛いのだと分かっている……だが、どうか今は我慢してくれ。その力を未来ある者たちに使ってくれ」
背中に回された腕は悲しみからか鬼舞辻に対する怒りからか小刻みに震えており、それが更紗のどうしようもなく悲しい気持ちを落ち着かせていった。
自分だけが辛いのではない、杏寿郎も剣士たちを救えなかった悔しさや悲しさがあるのだ。
「ごめんなさい……杏寿郎君もお辛いのにこんなことを言わせてしまって。もう……大丈夫です、先に進みましょう。炭治郎さんたちが近くにいるはずです」
「謝らなくていい。前に進んでくれるならばそれでいいんだ……走れるか?」
「はい」
更紗の返事を合図に2人は表情を引き締め直しこの場を後にしようとしたが、足を動かす前に志半ばで未来を断たれてしまった剣士たちの冥福を祈って2人揃って手を合わせた。