第24章 凄惨と合流
「先に進もう。ここにいる者は皆強い。俺たちがそばにいなくてはいけない理由がないんだ。気持ちは分かるが今は先に向かうべきだ」
「……かしこまりました。皆さん、先に上へ行ってお待ちしております。生きて待っていますから!」
相変わらず不安になる一言を残す更紗に杏寿郎が苦笑いを浮かべると、それに釣られたように後ろを走る皆も苦笑いを浮かべた。
「こちらはご心配なく。また後でお会いしましょう」
優しい笑顔に変化したしのぶに2人は頷き返し、走る速度を上げてその場を離れて行く。
不安は拭い切れないが、この状況下ではどこに誰といても危険度は変わらないと気持ちを切り替え、更紗は杏寿郎に置いてけぼりにされないよう決して速くはない足を必死に動かした。
「速度はこのままで大丈夫だな?」
一応聞いてくれてはいるものの、足を動かす速度が緩くなる気配はなく……何より表情が緩めるつもりはないと雄弁に語っている。
「問題ありません!これ以上はついていけなくなりますが……あ!杏寿郎君、あそこに階段があります!あれを登りますか?」
「問題ないならばこのままの速度であの階段を登り切る!戦闘音も微かに聞こえてきたな……鬼舞辻が近いぞ。戦闘準備もだが心の準備もしておけ。きっと生易しい現場ではない」
それは何となく更紗にも分かっていた。
まだ距離があるはずなのに、先ほどと同じ痛い匂いが鼻をかすめたから。