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月夜の軌跡【鬼滅の刃】

第23章 上弦と力


再生したはずの頭は自身の打撃により体から離れて宙を舞う。

猗窩座の心の中……記憶の中で何が起こったかなど都合良く頭の中に流れ込んでくることがあるはずもなく、ただ崩れゆく体を見守るしか出来ない。

それでも更紗はどうしても気になった。
これが普通の鬼だったならばそのまま見送ってたに違いない。しかし目の前で猗窩座が崩れゆく様は、鬼になり記憶をなくしても欠片として残り続けた人の名前……恋雪を連想されるように、儚く清廉で……綺麗に映ってしまったから。

「猗窩座さん!会えましたか?恋雪さんに……会えましたか?」

瞳に涙を滲ませ1歩前へ歩み出た更紗に、猗窩座は視線だけを動かし僅かな時間見つめた後、またも皆の視線を釘付けにする表情を見せた。

瞳の色は今にも涙が零れ落ちそうなほどに悲しいが、柔らかく細められたそれは幸せそうに微笑みをたたえており、更紗や3人の胸を締め付ける。

「来世で猗窩座さんが恋雪さんと幸せになるよう祈っています!ずっと祈っています!」

その言葉を聞き終わるのを待っていたかのように、猗窩座は最後まで笑みを絶やすことなく……やがて雪のように儚く消えていった。
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