第23章 上弦と力
シン……と部屋が静寂に包まれる。
上弦の弐との闘いの時は鬼が吐く言葉さえ一言一句教えろと言われ、ほぼ休むことなく声を出し続けていた鎹鴉も、今はただ流されてくる情報を脳内で整理していた。
「そんなことが……ありえるのかい?だって更紗や杏寿郎君は鬼の頸を斬って今まで鬼を倒していたんだろう?唯一の弱点がなくなれば倒せないじゃないか」
顔面蒼白とは正にこのことを言うのだろう。
涼平と紗那は動揺から呼吸を浅くして眉をひそめている。
千寿郎とて家族と更紗が戦場に赴いてしまっているので、2人の気持ちは痛いほどに理解出来る。
それでも煉獄家の血を引く者としての矜持が冷静さを保たせていた。
その冷静さを保ったまま鎹鴉へと視線を映す。
「鬼舞辻無惨は柱の方々に囲まれていたと聞きましたが……それまで拘束されてたなら誰かが何か……首を斬ったりしませんでしたか?全員の刃がその時に届かなかったとは考えづらいのです」
「……岩柱様ガ頸カラ上ヲ潰シマシタ。デスガ、鬼舞辻ハ消滅セズニ柱タチヲ本拠地内ヘ引キ摺リ込ンダト聞イテイマス。恐ラク鬼舞辻ノ弱点ハ太陽ノ光ダケダト……本部ハ判断シマシタ」