第23章 上弦と力
以前会った時よりも強くなったからか、それとも猗窩座の求める強さの基準に達したからか……何が理由かは分からないが、更紗が言い返しても辛辣な言葉は返ってこない。
(調子は狂いますが……今は猗窩座よりお2人を優先しなくては。杏寿郎君も……傷は浅いけど念の為)
戦闘に加わったばかりの杏寿郎の傷はかすり傷だ。それでも楽観視して後々に影響するかもしれないならば、今のうちに回復させておくに越したことはない。
杏寿郎には傷口のみにふわふわと粒子を纏わせ、あとは今も猗窩座と戦闘を続けている2人の酷い傷を治すだけ。
(正直……ここまで血を使うとは思っていませんでした。造血薬たくさん貰っててよかったです)
鬼の頸を斬る為でなく自分の腕を切るために日輪刀を抜き出し、再度その刃を隊服をまくった腕に滑らせようと当てがった瞬間、少し離れた場所で響いていたはずの戦闘音が至近距離で鳴り響いた。
「更紗には触れさせん!猗窩座、君の相手はこっちだ」
咄嗟に日輪刀を構え攻撃に備えたが、目に映ったのは炎を模した羽織。
更紗に迫り寄った猗窩座を食い止めてくれたらしい。
攻撃を仕掛けてくるならば急がなくてはと素早く刃を腕に滑らせた。