第23章 上弦と力
今すぐにでも飛び出したい衝動を必死に抑え、杏寿郎の言う隙を見つけるために感覚を研ぎ澄ませる。
激しい戦闘を繰り広げている時に飛び出しては3人の連携を損なってしまう可能性が考えられるので、未だに鳴り響く戦闘音がなり止むその一瞬を辛抱強く待った。
永遠にも感じられた時間は、ほんの数秒だったに違いない。
その永遠の時間をどうにかやり過ごし、戦闘音がピタリと止んだ瞬間、更紗は闘いの場へと身を投じた。
「お前……以前より格段に強くなっているではないか!いいな!刀を抜け、俺と闘え!」
更紗の姿を確認するなり上弦の参……猗窩座は構えを取って今にも迫り来る勢いだ。
猗窩座の挑発に日輪刀へと手が伸びかけるも、今自分がしなければいけないことは猗窩座と闘うことではない。
上弦の鬼との闘いで深い傷を負った義勇と炭治郎を回復させることだ。
「冨岡様、炭治郎さん!私のことは気にせず鬼を討って下さい!どこにいても……どのように動いて下さっても必ず治癒します!」
2人の出血量はしのぶを発見した時とさほど変わらない。
すなわち普通の治癒では追いつかないことを意味している。
「絶対に助ける……貴方に誰一人奪わせません!」