第23章 上弦と力
2人は暫く無言のまま走り続けていたが、流石にこのまま自分が憤り感情を乱していては周りとの連携を混乱させかねないと思い、大きく深呼吸を1つして両頬をパチンと思いっきり叩いた。
「な、何だ?!今の音は更紗か?」
「はい!気持ちを落ち着けていました!杏寿郎君、もう大丈夫です。ちゃんと闘えますし治癒も出来ます。あとは……」
目的地までもう目と鼻の先という所まで来て慎重に歩を進め始めた頃、更紗が鞄から栄養剤入りの注射器を5本取り出したのでそのあまりの多さに杏寿郎が息を呑んだ後に溜め息を零す。
「それほど一度に体内へ入れて大丈夫なのだろうな?体内に入れたはいいが……蓋を開けてみれば許容量を超えてましたでは済まされんのだぞ」
完全に杏寿郎が呆れている。
許容量を超えていました……となれば命に関わると流石の更紗も理解しているので、そこまで考えなしではない……はずだ。
「大丈夫です!すぐになくなるものですし、圧縮すれば問題ありません!しのぶさんや珠世様たちには止めておきなさいと言われて……あ、いえ。なんでもございませんお忘れください」
「……柱である君の行動を尊重するが、帰ったら詳しく聞かせてもらうとしよう!」