第23章 上弦と力
「んで出てきてみりゃあ、煉獄や千寿郎とは本当に良好な関係築いてて家の中が明るくなってた……と。加えて姫さんは素直で可愛らしいときた!……出来すぎじゃねぇ?」
「……出来すぎた女子だが、杏寿郎以外に扱える奴がいないだろう。気が付けば行方不明になってるか無茶をして怪我をしてるかだぞ?普通なら心臓か胃が悲鳴を上げる」
こればかりは天元も頷くしか出来ない。
他の者がどう思っているかは知るところではないが、自分は1度任務を共にしただけで手に余ると感じたからだ。
一緒に任務をこなしたことのある実弥や無一郎も、あのじゃじゃ馬っぷりに手を焼いたに違いないと想像に容易い。
「違ぇねぇ!そんな誰かを煩わせることが得意な姫さんも、今となりゃあ居なくちゃならねぇ存在だ。甘い考えって分かってるが……全員戻ってきて欲しいな」
「あぁ、誰が抜けても誰かが悲しむからな。取り敢えず上弦の弐は倒した。俺たちはお館様をしっかりお守りし、剣士たちへの情報伝達が滞りなく行き渡る術を確保しなくては」
まだ決戦は始まったばかり。
序盤から更紗の力の蓄積量は大幅に削られたが、上弦相手に死者0名で乗り越えられたことは大きい。
つまりまだお館様の言っていた、凄惨な現場が訪れていないことを意味している。