第23章 上弦と力
「おい!お前、俺たちの怪我を治したから……」
伊之助が言葉を言い終わる前に、杏寿郎は床に倒れ込んだ更紗の体を抱き上げ、頬や首筋に手を当てて体温や脈を確認していた。
「気力や体力が尽きたのだろう。よく守り助けてくれた!大丈夫か?少し休んで……何か可笑しいか?」
心配そうに覗き込む2人に対し、疲れきっているはずの更紗はニコニコと笑顔を向けている。
鬼の本拠地に全く似つかわしくない、心からの笑顔だ。
「可笑しくなんてありません。お2人とも生きてくださってることがあまりに嬉しくて!よかったです!怪我らしい怪我も見当たりませんし、本当によかった……」
今度は安堵から瞳は涙で濡れていき、自分を心配して体を寄せてきてくれていた2人の首元に腕を巻き付け、その体を更に自分の体へと寄せた。
そして更紗の体に寄せられた伊之助は母を想ってか涙を流しながらホワホワと和み、杏寿郎は穏やかな笑みを零して、労うように更紗と伊之助の髪に自分の手を優しく滑らせる。
「更紗……大丈夫だ。落ち着きなさい。現状、君が1番体力気力共に消耗している。少し休んでいこうか」
「うぅん……私も大丈夫です。すぐにしのぶさんたちや珠世様、柱の方々と合流しましょう!まだまだ守り助け、鬼舞辻無惨を倒さなくてはですから!」
更紗は2人を腕から解放するとぴょんと立ち上がり、2人へと手を差し伸べた。