第23章 上弦と力
「何か……とは何だ?」
「煉獄の旦那は姫さんが鬼と……十二鬼月と闘ってるとこ見たことないから分かんねぇだろうが、姫さんは漏れなく十二鬼月と闘った時、鬼そのものに近付いて何かしら足止めしてんだよ」
下弦の陸には体術、上弦の参には脚を日輪刀で突き刺して動きを止め、陸の兄鬼に対しては藤の花の練り香水を傷口に塗り付けた。
どれも決定打には至らなかったが、後に自分や他の誰かが決定打を打ちやすい状況を無意識に作り出してきたのだ。
「なんと……あの華奢な体でか?!ならば今はどんな事が考えられる?!」
「幸いにも今は煉獄が利き腕を使える状況だからなぁ……煉獄に氷の菩薩を任せて飛び込むか……煉獄に投げ飛ばしてもらうかのどっちかじゃねぇかと踏んでる!」
飛び込んだり投げ飛ばしてもらったりして何をしようとしているのか、槇寿郎には想像もつかないが……どう考えても無謀だとしか思えない。
「……あの子たちも心配だが、屋敷でこの状況を聞いている更紗のご両親の心臓がもつか心配だ。千寿郎が上手く宥めてくれると良いが」
「姫さんと関わる奴は心臓を強く持ってなきゃ心労で倒れるって!大丈夫だろ、姫さんの両親なら姫さんの……ことを理解してるはず……」
自分で言いながら天元は自分の言葉に自信をなくしていった。
柱であった自分も更紗と任務に着き、何度も更紗に冷や汗をかかされたからだろう。