第23章 上弦と力
「杏寿郎、更紗っ!……くっ。間に合うか……」
2人の半身が氷で覆われたと鎹鴉から情報がもたらされた。
更紗の能力でそれ以上の侵食は食い止めているが、蓄積分が尽きる若しくは凍らされた痛みで更紗の気力が限界を迎えると、瞬く間に全身凍り付いてしまうだろう。
「嘴平にかかってんな……特に姫さんは日輪刀ごと凍らされてる。技を出すことは不可能だ」
鬼はしのぶの残していった毒で身動きが取れない状況だ。
しかし更紗と杏寿郎、柱2人も本来の力を封じられており、自由に動き回れるのは伊之助だけである。
「……更紗が治癒に専念すると思うか?」
利き腕ごと日輪刀を凍らされてしまえば出来ることが限られてくる。
普通なら鬼の血鬼術を避けながら治癒に専念することだけが更紗に出来ることだが、どうもそれだけで終わりそうにない。
「いや、身を呈して煉獄を守るか……嘴平を守ってただろう。今までの姫さんならな!たぶんだが今の姫さんは身を投げ出さねぇ。まぁ、何かしら行動はするだろうが」
右半身が思うように動かないからと言って大人しくする更紗ではない。
今はまだ避けることと治癒に尽力しているようだが、その動きが何とも怪しい。