第23章 上弦と力
「どうして笑ってるの?!どうして笑いながらそんな事が言えるのよ!」
鬼の思惑通り更紗の怒りは自分に向けられ、日輪刀を構えながら猛然と迫りよってくる。
しかし1つ計算違いの事が起こっていた。
「あの子たちを壊したの?ハハッ!やっぱりいいね、更紗ちゃん!早く俺と1つに……」
ゲホッーー……
漏れなく鬼は人を不快にする言葉を吐き散らすが、やはりこの鬼も例に漏れない……いや、思考回路が他の鬼より数段イカれている。
女子に対して異常なまでに執着し、鬼舞辻無惨の意思をも上回る勢いで更紗を欲する鬼は……突如血を吐き、左の目玉を文字通り零れ落とした。
衝撃的な光景に杏寿郎や伊之助はもちろん、鬼の眼前まできて日輪刀を振り上げていた更紗の動きをも止めた。
何の前触れもなく目玉が零れ落ちた鬼は、自分の身に何が起こっているのか理解出来ず、正常に機能を果たしている右目でただ呆然と崩れゆく己の両手を見つめている。
止まった体、止まった思考を1番に動かし結論を導き出したのは、ある人物と長い期間共に柱として肩を並べ続けている杏寿郎だった。
「胡蝶の毒だ!構えろ!嘴平少年、君の母上の仇だ!頸を落とせ!」