第23章 上弦と力
杏寿郎と更紗の前に現れたのは、先ほど伊之助に血鬼術を放った小さな人形。
その人形は作り出した本人と瓜二つで、杏寿郎の言葉通り本人と同威力の技を惜しげもなく繰り出してくる。
「はい!……杏寿郎君、この人形2体の相手は私がします!準備が整い次第、伊之助さんの援護に向かって下さい!」
相変わらず自分に厳しい無茶を言う更紗に杏寿郎は眉をひそめて奥歯をかみ締め、チラとその少女を視界に映した。
(1体ならば余裕がありそうだが、2体はどうだ?……せめて弾き飛ばしてからだな)
「分かった!君は俺たちより自分の体を優先しろ!いいな?!」
更紗としては全力で杏寿郎や伊之助の体を優先したいが、自分の案を受け入れる代わりの条件だと理解し、こちらも眉をひそませ奥歯をかみ締めながら杏寿郎を視界に映す。
「かしこまりました!私の準備は整っています!いつでもそちらの人形を引き受けられます!」
「頼んだぞ!」
その声を合図に更紗は人形から距離を取り、杏寿郎の側まで移動してトンと背中を軽く預けた。
「お任せ下さい。杏寿郎君もお気を付けて、伊之助さんをお願い致します」