第23章 上弦と力
「伊之助さん!私たちが援護します!」
「あ"ぁ"?!何言って……分かった!」
突然援護と言われた伊之助は疑問を投げつけようとしたが、更紗と杏寿郎の姿を見て全てを察し防御態勢から攻撃態勢へと転換させる。
その姿……2人は互いに背を預け、迫り来る無数の氷の礫を弾き飛ばす算段を立てていたのだ。
「更紗、いくぞ」
「はい、いつでも大丈夫です!」
2人はそれぞれの自らの技の構えを取り、眼前に迫りつつある血鬼術をしっかり見据えた。
「炎の呼吸 肆ノ型 盛炎のうねり」
「紫炎の呼吸 参ノ型 活炎激発」
各々の技は3人へ襲いかかってきていた、死を彷彿させるほど無数の礫を背後に押し流しては霧散させ、確実にその数を減らしていく。
それでも防ぎきれないものは更紗の能力で即座に癒し、ただひたすらに伊之助が通れる道を作ることに尽力した。
そうして鬼殺隊随一の体の柔らかさを持つ伊之助が通れる一筋の道を作り出し、杏寿郎が叫んだ。
「嘴平少年、行けー!」
初めて名前を呼ばれた驚きを勢いに変え、伊之助は2人が作ってくれた道を鬼へと向かって全力で走り、二対の日輪刀を構えて高く跳躍する。
「獣の呼吸 陸ノ型 乱杭咬み」