第23章 上弦と力
「あーぁ、鳴女悔しがってるだろうなぁ。せっかく更紗ちゃんをあの方の所に連れて行ける絶好の機会を無駄に」
「紫炎の呼吸 伍ノ型 烽火連天」
どこか演技くさい白々しい言葉は更紗によって強制的に停止させられ、代わりに鬼の左脇腹から右肩にかけて深い裂傷が刻まれて血が吹き出した。
先ほどまではそんな傷さえすぐに塞がっていたのだが、今は回復するどころか鬼に激しい痛みを伴わせている。
「炎の呼吸 壱ノ型 不知火」
「獣の呼吸 弐ノ型 切り裂き」
そんな鬼へさらに追い打ちをかけるように杏寿郎と伊之助の技が叩き込まれ、今までどんな時も崩すことのなかった余裕の表情が崩れていった。
「それが噂の赫刀?まさか更紗ちゃんも扱えるようになってたとはね。これは確かに……痛い」
「さっきも言ったが俺は……俺たちは君との話しなど望んではいない。痛いならば楽にしてやる!」
杏寿郎の言葉を合図に更紗と伊之助も日輪刀を握り直し、胴や頸を斬られた痛みで膝を着いている鬼との距離を一気に詰めて刃を振りかぶる。
「それは遠慮するよ。血鬼術 散り蓮華、粉凍り」
低い位置から放たれた血鬼術の連撃は、逃げる隙がないほどに3人を取り囲み全方向から襲いかかっていった。