第23章 上弦と力
「まだそんなに残ってるんだ!でもそれ以上は使わないで欲しいなぁ。俺の取り分が少なくなっちゃうし」
鬼は更紗を取り込む気でいるが、その更紗にも障子は口を開けて迫って来ているので、この鬼が更紗を取り込むことを良しと考えていない鬼がいるのだろう。
「貴方に差し上げるものは持ち合わせていませんが……そう思っているなら、先ほどから出てくる障子をどうにか……して下さいませんか?不自由極まりないのです」
鬼の攻撃を躱し障子を避けながら睨み付ける更紗へ、困ったような……本当に困っている風を装った胡散臭い表情で首を傾げる。
「それがねぇ……そうはいかないみたいなんだ。俺だって何度も言ってるんだよ?女の子は残しておいてって。でも鳴女はうんともすんとも答えてくれない。まぁ…… 更紗ちゃんを諦めるって言えばなくなるんじゃないかなぁ?ほら、こんな風に」
胡散臭い表情に満面の笑みが上塗りされた瞬間、跳躍している更紗の周りを取り囲むように障子が出現した。
声も出せぬまま今まさに開こうとしている障子を緩慢とした世界でただ見つめていると、杏寿郎の動揺した声や伊之助、カナヲの叫び声……そしてすぐ近くで自分の名前を呼ぶしのぶの声が聞こえた。