第23章 上弦と力
鎹鴉たちの情報通り、伊之助が更紗たちと合流していた。
その経緯までは皆の知るところではないが、気の知れた剣士が到着したことはこちらにとって有利となるものだ。
そして防戦一方となっている理由。
それは柱たちを物理的に分断させようと、部屋の至る所に障子が現れ始めたからである。
あのまま順調に進んでいれば間違いなく更紗たちが優勢だった。
しかし足を踏み出せば足元に障子が出現し、上下左右に跳躍して鬼の攻撃を避けようとすれば、また障子が出現して体を飲み込もうとしてくる。
つまり柱3人は攻撃を避けられず受け流すしか出来ないので、自ずと生傷が増え更紗が治癒を施し続ける事態に陥っているのだ。
「更紗、あまり無理はするな!力は無限じゃないだろ!」
「無理はしておりません!この日の為に限界まで体内に蓄積させてきたのです。まだ……首元くらいまで残っています」
尻すぼみになる更紗の言葉に、この場の全員がそれは真実ではないと何となく理解したがそれを深く掘り下げる者はいない。
わざわざ鬼の前で本当のことを聞き出す必要はないし、言う必要もないからだ。
実際のところ、更紗の蓄積された力は度重なる治癒によって鳩尾くらいまでとなっている。