第21章 秘密と葛藤
そんな状態が続いたが、暖かな温もりが全身を包み込み、更紗の世界に音が舞い戻ってきた。
「どうしたんだ?!一体何があった?こんなに濡れて……どれほどこここに1人で蹲っていた?体が冷えきっているではないか!」
「ごめんなさい……ちょっと考え事してたら寝ちゃってたみたいで。大丈夫、ちゃんと動くから……どうするべきなのか、しっかり考えるから」
返答になっていない更紗の言葉に杏寿郎は悲しげに眉をひそめ、冷え切った体を抱き上げ屋敷へと走り出す。
「今は何も話さなくていい。帰って風呂に入るぞ」
意識を取り戻した更紗が重たい頭を動かし空を見上げると、変わらず厚い雲に覆われており太陽の僅かな光さえもないように映った。
「杏寿郎君、もう夜なの?空が暗い」
「……夜だ。ただでさえ大雨で心配していたのに、いつまで経っても帰ってこんから肝を冷やしていたんだぞ。いつの日か言ったが、1人で涙を流さないでくれ……胸が締め付けられる」
泣いているのか泣いていないのか……雨で濡れているので更紗自身判断出来ないが、杏寿郎が物理的なことだけを指しているのではないと理解出来た。