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月夜の軌跡【鬼滅の刃】

第21章 秘密と葛藤


屋敷に到着する頃には更紗のみならず、傘をほっぽり出し街中を走った杏寿郎もずぶ濡れとなってしまっていた。
全身から水が滴り落ち、玄関はもちろん風呂場へと続く廊下も2人が通った後に水溜まりを作っていくが、杏寿郎はそれを全く気にもとめず足を動かし続ける。

やかで風呂場へと辿り着くと杏寿郎は更紗を床へと下ろし、手拭いなどテキパキと準備を整えていった。

「俺は後で入る。気にせずゆっくり体を温めなさい。いいな?」

夜になっても帰らず、見つけたと思えば土砂降りの中傘も差さず街の隅で蹲るような……叱られる要素しか見当たらない更紗へ、杏寿郎は優しい笑みを浮かべ優しく頬を撫でる。

そうして更紗が頷くと、今度は労わるように頭を撫でて踵を返すが、それは後ろからの小さな衝撃によって止められた。

更紗が抱き着いてきたのだ。

「どうした?早く温まらねば風邪をひいてしまうやもしれんぞ?」

風邪を引かない体であると分かってはいるものの、こうして後ろから抱きついてきているのに、いつも感じられる温かさが全く感じられず心配が杏寿郎の胸を覆った故の言葉。

その言葉に反応せず抱きつき続ける更紗に苦笑いを零し、杏寿郎は体を反転させて未だに冷え切った体を抱きすくめた。
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