第21章 秘密と葛藤
更紗はキュッと唇を引き締め、涙で滲みそうだった瞳に強い意志を灯らせた。
「私だけ唯一夜も身が空いている柱です。私にお館様の護衛を努めさせてください!力不足かもしれませんが、力の限りお館様をお守りします!そして上弦の鬼も鬼舞辻無惨も倒します!だから……どうか私たちの前から居なくならないでください!」
言っていることが夢物語も甚だしいと更紗自身が1番分かっている。
全てを柱1人で倒せるのなら、鬼殺隊のような大きな組織自体必要なく、9人もの柱を立てる必要などないのだから。
「お願いします……優しい人が誰かのために犠牲になる姿を見たくないのです。誰にもいなくなってほしくないですし、誰かが涙を流す姿も……見たくないです」
得体の知れない奇妙な力を持つ自分を鬼殺隊へ受け入れてくれ、会えばいつも優しい言葉をかけてくれたのは紛れもなくお館様だ。
自分を含め性格も年齢もバラバラな柱たち全員が慕い、大切に想っているのはやはり目の前で優しく微笑んでいるお館様。
そんなお館様が亡くなれば親交の深い柱たちは必ず涙を流す。
失い悲しみが広がることが今の更紗には耐えられないのだが、そんな想いは受け入れられなかった。