第21章 秘密と葛藤
聞かれてしまった……と言うからには、やはり更紗が聞いてはいけない話しだった。
行冥も表情こそ平静を保っているが、何となく更紗のこれからの扱いをどうしたものかと悩んでいるように見える。
「道に迷ってしまって……玄関の場所を聞こうとしていたのです。それが……こんな事態にしてしまい、申し訳ございません。でも……聞かなかったことになんて出来ないです」
鬼舞辻無惨が襲来すると分かっていて柱を護衛に付けないのだ。
お館様は何らかの方法で鬼舞辻無惨を足止めし……そのまま命をなげうつ覚悟を決めているのだと交流の少ない更紗でも分かってしまった。
「月神、これはお館様が切に願っている事柄だ。そんなことを言っては」
「いいんだ、行冥。この子は嘘を付けないから、真っ直ぐ思いの丈を伝えてくれているんだよ。でも困ったね……君を含め柱には私の護衛をするより、後輩を導き鬼を……鬼舞辻無惨を倒すことを最優先に考えて欲しいのだけど」
願われても、目の前で失われてしまうかもしれない命があると知った以上、
はい分かりました、当日は知らないふりをして後から馳せ参じます
など言えるわけがない。
鬼殺隊に入ったのは人を助け、人々の想いや人生を繋ぐためだ。