第21章 秘密と葛藤
(1週間以内に鬼舞辻無惨が?!ここに姿を現すという事は……お館様の前にってこと?どうしよう。柱を護衛につけないって……命を落とすおつもりなのでしょうか)
心臓が胸を強く打ち、冷や汗が止めどなく更紗の体を流れていく。
部屋の前を離れようにも動揺している今動き出せば、中の2人に気付かれ困らせてしまうかもしれないと思うと、体が動くことを拒否してしまった。
瞼をぎゅっと瞑り祈るように手を強く握り締めるが、心臓も冷や汗も体も何もかもが思い通りにならず、不安や恐怖から小刻みに体が震え出す始末だ。
(どうしよう、どうしよう……怖い。お館様、亡くなってしまうの?杏寿郎君、どうしたら)
「更紗、そこに居るのかい?」
ビクリと肩が跳ね上がった。
更紗がここに来ることは想定外だったのかもしれないが、動揺して気配を完全に隠しきれていない今の更紗など、普段から気配を読み生活を営んでいる2人からすれば、目の前に姿を現しているのと変わらないのかもしれない。
「……はい。申し訳ございません。盗み聞き……するつもりはなかったのですが……申し訳ございません」
いないふりをする事など出来ず、カラカラに乾いた喉から辛うじて声を出すが……出てくるのは掠れた情けない声と謝罪だけだった。