第21章 秘密と葛藤
考え事をしていたとは言え人様の屋敷で迷子になってしまった更紗は自分に呆れ果て、小さくため息を零して辺りをキョロキョロと見回し耳を澄ませた。
「誰もいません……どちらに行けば玄関へ辿り着くのか見当もつかないです。あ、でも話し声があちらの方から……あの声は……お館様と悲鳴嶼様?……お話の最中に割り込んで玄関の場所を聞くなんて失礼ですが、背に腹はかえられません……よね?」
このまま迷っていれば帰るまでに日が暮れてしまい、更紗にとって1日の間で最も避けなくてはならない時間となってしまう。
ただでさえ他の柱たちに警邏業務で迷惑をかけているのだ、これ以上新たな厄介事を巻き起こす訳にはいかない。
それでもやはりお館様と行冥が2人で話している部屋へ近付くのは気が引けてしまい、無意識に忍び足となってしまう。
可能な限り迷惑をかけぬよう気配を消して近付いていくが、部屋に近付くにつれ聞きたくなくても2人の会話が更紗の鼓膜を震わせ……次第に更紗の気持ちや体も震わせていった。
『あと1週間以内に鬼舞辻無惨がここに姿を現す。この事は他の子供たちには伝えないでほしい。特に柱の子たちは私の護衛にと駆け付けてしまうだろうからね』
柱の1人である更紗は声を掛けようと開きかけた口元を両手で押さえた。