第21章 秘密と葛藤
幾度となく更紗が煉獄家と本部を往復した甲斐もあり、大量の治療薬を拵える事ができ、鬼殺隊隊士に複数本ずつ行き渡らせられた。
しのぶや珠世、愈史郎は治療薬を作る間にも着々と様々な薬を完成させ、ほぼ準備が整ってきた。
杏寿郎の継子たちも無事に全ての柱稽古を完遂させ、禰豆子のいない離れへと帰り、日々杏寿郎からの鍛錬をこなし毎日を過ごしている。
剣士たちに至ってもほぼ柱稽古を突破し、後は鬼からの宣戦布告を待つだけとなった。
そんな中、更紗は研究の最終日を迎え、今から自分の屋敷へ帰ろうと産屋敷邸の廊下を1人歩いている。
(造血薬も栄養剤もたくさんいただけました。あとはお家に帰って少し大きめの鞄を作らないと。もしもの時のために、いただいたお薬は全て持って闘いに挑みたいですし)
挑みたい気持ちは山々だが、何分更紗は裁縫がかなり苦手である。
闘いまでにそれを作り終えることが、今までの様々な柱稽古よりも難関かもしれない……
「もっとお裁縫の練習もしていれば良かったです……でも誰に教えてもらうとなるとお母さんですが……お母さんも苦手な雰囲気がプンプンします。あれ、ここはどこでしょう?えぇ……考え事をしていたら迷ってしまいました」