第21章 秘密と葛藤
「はい。しかしながら、私の涙腺はどうも締まりが悪いので……初めは苦労しそうです」
既に今日も涙を流しかけたので、危うくその日のうちにケジメを破りそうになったのだが、どうにか流すまでには至らなかったので効果はあるのかもしれない。
「確かに君は涙脆いので苦労しそうだな!だがやると決めたからには頑張ってみるといい!ただ……あまり我慢し過ぎて壊れてしまわんようにな。俺の前でくらい弱さを見せてくれると嬉しい」
「杏寿郎君の前では笑顔でいたいのですが……でもどうしても悲しくて辛い時はこうして甘えさせてください。頬に触れていただいているだけで、すごく幸せで満たされた気持ちになるので」
そう言いつつ、目の前に甘やかしてくれる存在がいるともっと触れたくなるもので、穏やかに見つめてくれている杏寿郎の胸の中へ更紗がゆっくりと体を預けると、待っていたと言うようにぎゅっと抱き寄せてくれた。
「2人の時はいつでも甘やかしてやる。全てを語る必要はないが、更紗の中で解決出来ず悩むことがあれば遠慮なく言っておいで。必ず時間を設けると約束する」
胸元から響く声と耳へと直接響く声のどちらも更紗に安心感を与え、それだけで涙が流れそうになってしまう。
「はい、ありがとうございます。はぁ……すごく今幸せです」
「君が幸せなら俺も幸せだ。……もう夜も更けてきた、しばらくすれば風呂に入り俺たちも体を休めようか」
穏やかな日々は緩やかに過ぎるが、確実に過酷な日々は近付いてきている。