第21章 秘密と葛藤
「どちらの君も愛らしくて、どちらがいいのかなど選ぶのは難しそうだ。それにしても何故化粧をと思ったのだ?」
「フフッ、褒め過ぎです。お化粧は……特に見た目をどうこうしたい……と思ったと言うより、私の場合は涙を流さないためです」
年頃の女子なので興味が湧いたのかと杏寿郎は何となく思っていたのだが、どうやら更紗の場合は理由が違うらしい。
涙を流さないため……それで何故化粧に繋がるのか分からず、杏寿郎は首を傾げた。
「お化粧を施した顔で涙をボロボロ流すと、お化粧が流れてしまうでしょう?きっとそれは……素顔で流すより悲惨な見た目になると思うのです。いつまでも泣いて甘えられる立場ではなくなったのだ……と自分を律するためにお化粧に手を出しました」
なんとも女子らしくない理由で化粧に興味を示してしまった。
可愛く見せたい、綺麗になりたい……世の女性は自らの魅力を最大限に生かす意味合いも込めて化粧を施すが……これではどこぞの部族の戦化粧のようである。
それを頬を赤らめて言うのだから、杏寿郎も苦笑いを零すしか出来ない。
「泣きたい時は泣き、楽しい時は笑えばいいと俺は思うのだが、それが更紗の柱としてのケジメなのか?」