第21章 秘密と葛藤
完全な更紗の早とちりだったのだが、鬼殺隊の今置かれている状況が状況なだけにそれも致し方ないのかもしれない。
……だが闘いが始まっているのならば、柱となった更紗に知らせが来ないはずがないので、落ち着いて考えれば焦る必要は全くなかった。
杏寿郎も炭治郎も剣士たちも心の中でそう思ったが、憎めないそそっかしさが更紗らしく、笑顔を向けるだけにとどめた。
「この通り皆怪我の一つもしていない。さぁ、暗くなれば鬼が出るかもしれないので中へ入ろう。更紗の好きな芋羊羹も買ってきたのだぞ!夕餉の後に皆でいただこう!」
ようやく落ち着きを取り戻した更紗を腕から解放し、杏寿郎は地面に置いていた荷物を抱え直して全員を中へと促すが、更紗がその荷物の1つを杏寿郎からそっと自分の腕の中へと移動させた。
「私にもお手伝いさせてください!その……落ち着きがなくてごめんなさい」
更紗の気持ちを代弁するかのように、胸元の金色の釦が恥ずかしげにキラリと夕陽に照らされて赤く染まり、更紗の体が屋敷へと向くと同時にそれも皆から見えなくなった。