第21章 秘密と葛藤
「神久夜さん!皆さんを探して」
「待て待て!更紗、こんな時間にどこに行くのだ?!」
神久夜を呼び寄せたところで、探し人の1人である人の声が背後から聞こえてきた。
混乱状態の更紗が勢いよく振り返ると、そこには焦った表情をした杏寿郎とキョトンとした表情の炭治郎や剣士たちが立ち尽くしていた……両手に食材をたんまり抱えながら。
「杏寿郎……君、炭治郎さん……皆さん。よかった……ご無事だったんですね」
質問の答えになっていないが、更紗が何を思って屋敷を飛び出したのかを理解した杏寿郎は荷物を地面へ置いて、涙を浮かべる更紗の体を抱き寄せた。
「すまない、食材の残りが少なくなっていたので買い出しに行っていた。心配をかけたな、お帰り。更紗」
まだ研究に参加して1日目で準備も何も整っていないのに、もう闘いが始まってしまったのではと思い込んでいた更紗は、全員の元気で無事な姿に心から安堵し、杏寿郎の胸の中で小さく息を零した。
「そうだったのですね。無事であれば何も望むことはございません。ただ今戻りました……良かった……まだ闘いが始まったわけじゃなかった」