第21章 秘密と葛藤
「た……ただ今戻りました。遅くなり申し訳ございません」
無事に化粧を施してもらい、少しお茶を皆で嗜んだはいいものの、予定より随分と帰りが遅くなってしまった。
心配から叱られるのではとビクビクして玄関の戸を開いたのだが、何故だか人の気配がしない。
「あ、あれ?皆さんどこに行かれたのでしょう?夕餉の準備は……されているようですが」
草履を脱ぎ廊下を歩いていると魚を焼いた匂いが漂ってきているので、直前までこの家の中に間違いなく杏寿郎や炭治郎、剣士たちがいたはずだ。
「皆さんでお風呂屋さんにでも行かれたのでしょうか?でも書き置きもないですし……まさか鬼に襲われたなんてことは」
不安が一度胸の中で燻ると一気に広がるもので、更紗は急いで道場へ足を動かして中を確認するもやはり人の姿はなく……荒らされた形跡もない。
「もうすぐ日が暮れちゃう……どうしよう、皆さんに何かあったのでしょうか?」
日が落ちれば外に出ては行けないときつく言われているが、もし闘いが始まってしまっているのならば、そんなことも言ってられない。
更紗はそう思うや否や、日輪刀が腰にあることを確認して庭を走り抜け門を勢いよく開いた。