第21章 秘密と葛藤
「しのぶさん、これはどちらに置いておきましょうか?部屋の端っこで大丈夫ですか?」
変わらず……と言うより先程よりも些か元気になった表情でしのぶへ問いかける更紗の手は動き続け、横に並べていた箱を縦に積み直し、事もあろうか軽々と持ち上げた。
「部屋の隅で問題ないですが……急がなくていいですよ。まだ昨日の分が残っていますから」
「これくらい平気です!試したことはありませんが、杏寿郎君くらいなら持ち上げることは可能なので」
杏寿郎なる者がどのような人物でどのような体格の人間か……愈史郎には分からないが、名前から推測するに男だと判断して驚き目を見張った。
「珠世様、あの女子は一体何者ですか?あの腕であの重さの物を……」
「柱ですよ。下弦の鬼を倒し、甲となり、現存する柱全員から柱である事を認められた柱です。普段の様子からだと柱だと言われても信じられませんが、聞くところによると戦闘ともなれば阿修羅の如く日輪刀を振るうとの事です」
穏やかに笑い事も無げに重い物を運び、信じ難くも目を奪われる治癒の能力を放出させる少女に愈史郎は興味深そうな視線を向けるが、一瞬後には興味をなくし、持ち場へと足を進めていった。